技術経営ブログ

AIビジネスにおける学習用データの保護

2019年5月10日

技術ブログ

 AIビジネスを行う上で「学習用データ」は、同業他社との間で大きな差別化要因になりえるものであり、保護価値は高い。膨大な学習用データを学習させることで、人工知能はより賢くなり、人間と同様か、あるいはそれ以上の正確性を以って様々な事象を判断したり、制御指示を行うことができるようになる。良質な学習用データを確保できるか否かは、「AIソリューション」からもたらされる「期待される効果」に多大な影響を及ぼす。つまり、学習用データは、「AIソリューション」の質に直結し、AI社会における基本的なインフラとなりえる性質を持つ。このため、学習用データをいかに法的に保護するかがこのAIビジネスを成功させるための一つのポイントになる。

 知的財産権による「学習用データ」の保護は、データベースの著作権としての保護がまず考えられる(著作権法第12条の2第1項)。しかし、著作権法による保護を受ける場合には、学習用データが、検索のために「体系的な構成」を有している必要があり、更にその「情報の選択又は体系的構成」に創作性が認められる必要がある。学習用データが検索のための「体系的な構成」を有していない場合には、著作権法による保護が難しくなる。

 このため、知的財産権による他の保護手段として、不正競争防止法を利用したものが考えられる。実は、この不正競争防止法は平成30年に改正されており、AI・IoT等の情報技術の進展を背景としたデータの重要性い鑑み、データを安心してて依拠できる環境の整備への要請の高まりから、「限定提供データ」の保護制度が新たに新設された。IDやパスワードにより厳重に管理しつつ、相手方を限定して提供するデータを不正に取得、提供する行為は、不正競争防止法による救済を新たに受けられることになった(不競法2条1項11~16号)。また、いわゆるプロテクト破りについても保護範囲が拡大されている。

 限定提供データの例としては、自動運転等に使用するための車両走行データ、機械の稼働データ等であり(出典:経済産業省知的財産政策室”不正競争防止法平成30年改正の概要)、何れも自動車メーカーやデータ分析着事業者が、AIビジネスを行う上で学習用データとして使用可能なものである。このような不競法の救済を受けることができるか否かは、①限定提供性、②相当蓄積性、③電磁的管理性等の各種要件を満たす必要があるが、これらについての詳細は他のサイトや書籍に説明を譲るするが、この不競法による保護も戦略的に活用することにより、法改正前と比較して、自社のAIビジネスのアシスト力の発揮につながることは確かだと思う。

 しかし、AIビジネスに利用する「学習用データ」を不競法のみの保護に頼るのはやや不安だと思われる方もいるかもしれない。「学習用データ」自体は特許法の下での保護は難しいが、AIビジネスのモデルやその生成物については、特許取得ができる場合がある。特許法と不競法の知財ミックスで、AIビジネスを保護していくことが理想的である。

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