技術経営ブログ

孫氏の兵法から考える特許ポートフォリオ

2019年5月16日

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 孫氏の兵法に以下の言葉がある
「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」 (金谷治訳、「新訂孫子」岩波文庫)
 この言葉の意味するところは、例え百戦百勝しても最善の将軍とは言えない。戦わずして相手が降参するような将軍が最善の将軍なのである。

 むしろ相手側が戦意を喪失し、戦うことを諦めて降参してしまうような状況を作り出すことが、孫氏の兵法でいうところの「善の善なる者」になりえるのである。仮に百戦して百勝したとしても、「戦う」という行為は、相手側のみならず自軍にも損害を出してしまうことになる。できれば、相手側、自軍双方に損害が出ないようにして勝つことが望ましいものであり、それを可能とする状況を戦略的に作り出すことが重要であることを示している。

 現代においても相手企業との市場競争になった場合に、相手企業が戦意を喪失し、「戦わない」と決心してしまうような状況を作り出すことができれば理想的である。そのような状況を作り出すことができる武器が知財である。中でもノウハウ秘匿化と特許ポートフォリオがその武器の主たるものである。ノウハウ秘匿化は、相手企業が一生懸命に自社と同質の製品やサービスを作ろうとしても作れないが故に、戦意を喪失させる作戦であり、ノウハウを巧妙に隠しつつ製品やサービスの差別的特徴を醸し出す戦略を取る。特許ポートフォリオは、複数件の特許権により製品やサービスに対する参入障壁を法的に作っていく方法だ。1件の特許のみであれば、相手企業はその特許を何とか無効にしようとしたり、或いはその特許の権利範囲を迂回することをトライする。その結果、相手企業の戦意を喪失させるには至らず、「戦い」になってしまう。しかし、複数件の特許からなる特許ポートフォリオを築くことで、その特許ポートフォリオの個々の特許を無効にする労力と費用が過大となり、何よりもその特許ポートフォリオの全ての特許を迂回するのは困難であることから戦意を喪失し、「戦い」になるのを防ぎつつ、不戦勝を得ることができるのである。

 このような相手企業の戦意を喪失させるための特許ポートフォリオとは具体的にどのようなものを想像すればよいのであろうか。自身も直々指導を受ける機会をいただいた、とある先生の話によれば米国であれば20件あれば訴訟になることはなく不戦勝になるとのことだった。このような件数ベースの話に加え、特許の権利範囲は一方の特許をうまく回避できたとしても他方の特許を踏んずけてしまうような特許間の連関性を作ることと、簡単に無効にされないような特許の強靭性を持たせることが重要になる。

 このようにして不戦勝を勝ち取れるような知財戦略、中でも特許ポートフォリオを戦略的に作り上げていくことが現代の市場競争でも重要であることを孫氏の兵法では示しているようだ。

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