技術経営ブログ

かつての研究開発の定石(その3)

2019年6月14日

技術ブログ

20世紀も終わりに近づく頃になり21世紀に入る頃には、具体的な特性値のレベルが上がり切ってしまい、飽和状態に陥るようになってきた。これと同時に大衆消費社会が成熟していく中、「何が欲しい」と聞かれれば「〇〇が欲しい」というニーズが市場からはね返ってこなくなった。つまりニーズの潜在化が起きてしまったのである。その結果、今までのように中央研究所において研究された技術を上流から下流に流して製品化し、販売するリニアモデルが日本においても疑問に思われるようになってきた。

21世紀においては、ニーズを新たに創り出す時代に突入しており、イノベーションマネジメントという言葉が使われ始めたのもちょうどその時期だ。アップルが新たにスマートフォンを始めとした市場を創造し、そのニーズに応えることができる技術を調達する、いわばニーズ専行型のイノベーションモデルが中心になり、今までのシーズ専行型イノベーションに勝るものとなってきた。革新的な技術を創り出してイノベーションを興すよりも、市場のニーズを探索し、必要に応じてこれを新たに創造し、これに応えることができる技術を開発する方が遙かにイノベーションを高い確率で成功に導くことができると考えられるようになってきた。

その結果、研究開発のモデルは、上流の研究から下流の製品化まで一直線で進むものではなく、下流のニーズを掴んだり、上流の研究に遡ったり、すなわち市場と研究を行ったり来たりしながら進んでいく、自在型モデルに成り変わってきた。これに加えて、特に近年においてはスタートアップベンチャーが次々に新たなニーズを創り出して企業するようになり、また大学や研究機関からスピンアウトした人たちが革新的な技術をベースに起業し、大企業の強みをこれを整合させるいわゆるオープンイノベーションも進展の兆しを見せている。このため、研究開発のモデルは、上流から下流に向けて行ったり来たりするだけでなく、途中で分岐したり、或いは途中で外部の流れと合流したりして、まさしく複雑化した因果関係ネットワークを互いに絡み合いながら行ったり来たりするモデルになってきている。更には、かつてエジソンの時代(19世紀型)に行われていた研究開発の外部委託化も、21世紀において再び起きている。

このように、新しい時代の研究開発のモデルは、かつてのような定形化されたリニアモデルを脱皮し、ケースバイケースで自在にモデルを作り替える、まさしく不定形なものとなっている。その結果、「研究開発の定石」という言葉自体が無くなりつつある。そして、その研究開発をマネジメントする、R&Dマネジメントよりも、イノベーションそのものをマネジメントするイノベーションマネジメントに焦点が移り、R&Dはそのイノベーションマネジメントを中心とした中で一つの役割を果たす位置付けになっているのは確かだ。

研究開発のモデルは、19世紀から21世紀にかけて様々な変遷をたどってきた。今後の時代の移り変わりの中で、研究開発のモデルがどのように変遷していくのか、見守っていきたいところだ。

(終わり)

 

 

 

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