技術経営ブログ

技術と市場の不確実性

2019年8月13日

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「技術は不確実がある」と言われるが、近年においてその技術の不確実性がますます高くなっている。つまり、当初予定していた技術開発の目標スペックが達成できなかったり、販売する製品の製造プロセスを実現することができなくなることが後から発生する場合がある。このような技術の不確実性は、技術が本当の意味で完成されていないことが原因であることも当然ありえる。これに加えて、仮にその技術開発の目標スペックをクリアできていたとしても、その技術を活用した提供価値に対する顧客ニーズを創出することができないことによる不確実性もある(渡部俊也 「イノベータの知財マネジメント」p21-p22)。

ちなみに、研究開発を行っている期間中においても顧客ニーズ動向は絶えず変化し続ける。即ち、技術の不確実性を検討する上では、イノベーション経営戦略のみに注目すればよいわけではなく、顧客ニーズ動向の不確実性も十分に考慮する必要がある。つまりマーケティング戦略から上がってくる顧客ニーズ、ひいては市場動向を常に注視し、イノベーション経営の方向性がこれに見合うように修正を加えていく必要がある。仮にこの修正が行われない場合には、獲得した技術に基づく成果物としての提供価値、ひいてはこれらが具現化された製品やサービスが顧客ニーズに合致しないことになり、事業化を図ることが困難になる。

一般にこのような技術開発の不確実性と顧客ニーズ動向の不確実性は、研究と開発とを隔てる魔の川、開発と事業化とを隔てる死の谷、事業化と産業化とを隔てるダーウィンの海で表現される。研究において咲いた一つの芽に花が咲き、実がなり、収益化するところまでに幾多もの障壁を乗り越えていく必要がある。魔の川、死の谷、ダーウィンの海と進展する毎に、イノベーション経営戦略の枠を超えて、マーケティング戦略、ビジネスモデルの戦略へとマネジメントの対象範囲が徐々に拡張することになる。中でも事業化という大きな死の谷を乗り越えるためには、イノベーション経営戦略に加えてその上位にあるマーケティング戦略との融合が不可欠であり、これによって技術開発の不確実性と顧客ニーズ動向の不確実性をそれぞれ最小化することで初めて事業化の土俵に乗ることができるのである。

また、これらの障壁のいずれにおいて行き詰まっているかが分かれば、それに応じてどのステージまでの戦略マップまでを考慮に入れて検討を図ればよいかが明確になる。このため、これらの各障壁は、技術開発の不確実性に基づいて戦略の見直しを図る上での一つのマイルストーンとしてイメージすることができる。

なお、技術開発と市場動向の不整合により死の谷を越えられない理由としては、そもそも多義的な状態となっている顧客のニーズを本当の意味で深く理解できていないため、絞り込まれていない可能性もある(渡部俊也 「イノベータの知財マネジメント」p21-p22)。この顧客ニーズの深い理解のためには、マーケティング戦略を駆使することにより得られたマーケティングデータから理解することができる市場ニーズの解釈力を向上させる必要があり、その上で改めてポジショニングを試みる必要がある。このため、イノベーション経営戦略の戦略的成功を収めるためには、マーケティング戦略の力を向上させることが不可欠となり、更にそれに加えてそのマーケティング戦略をイノベーション経営戦略に深く融合させることが重要になる。

このため、技術開発の不確実性と顧客ニーズ動向の不確実性を共に削減することに加え、多義的な状態となっている顧客ニーズを絞り込むためのマーケティング戦略力の向上並びにイノベーション経営戦略の融合を進めるためにも、IPランドスケープを通じた分析を戦略的に盛り込う必要がある。そのためにも、IPランドスケープを行う際に収集したデータの可視化、即ち技術マップ、パテントマップの重ね合わせ、ひいては技術マップにリンクした提供価値や顧客ニーズとの重ね合わせを通じた検証が特に重要になる。

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