技術経営ブログ

急成長企業の共通のキーワード

2019年12月5日

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近年、革新的な技術やビジネスモデルで急成長しているスタートアップ企業の存在感が増している。

企業価値を急激に向上させた企業の代表的な例として、ユニコーン企業がある。ユニコーン企業は、企業価値が10億ドル以上と評価される未上場のベンチャー企業であり、創業10年以内の企業を指す。企業価値が高くて創業間もない企業は少ないことから、「うわさは聞くが、だれも見たことがない」という、ギリシャ神話に出てくる伝説の一角獣であるユニコーンの名前に例えられて表現され、「ユニコーンのように存在が稀な企業」という意味でそのように呼ばれている。ユニコーン企業の代表格としては、ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズや、宇宙開発ベンチャーのスペースX等がある。日本ではメルカリがかつてユニコーン企業の代表格であったが上場したため、「未上場のベンチャー企業」という定義から外れている。代わりに、深層学習による制御技術をその事業内容とするプリファード・ネットワークスがユニコーン企業に成長している。

以下の図は、日本経済新聞社が2019年に調査した、ユニコーン企業も含む創業20年内の未上場国内企業の推定企業価値ランキングを示している。

創業20年内の未上場国内企業の推定企業価値ランキング (日本経済新聞 2019年11月3日に基づき当社作成)

1位は、上述したプリファード・ネットワークス、2位のTBMはプラスチック代替素材を、3位のスマートニュースは情報アプリを、4位のfreeeはクラウド会計ソフトを、5位のエリーパワーはリチウムイオン電池をそれぞれ事業の核としている。

日本経済新聞によれば、この創業20年内の未上場企業で企業価値が推計で100億円を超えた企業は、2019年9月末時点で63社であり、2018年時点での47社から大幅に上回っている。政府がまとめた成長戦略「未来投資戦略2018」では「ユニコーンまたは同等の上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出する」という目標を掲げており(未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革― p123 2018年6月15日)、投資ファンドやベンチャーキャピタル等、急成長企業に資金を出資する様々な仕組みが出てきており、その選択肢も増えている。

これらのユニコーン企業等を始めとする急成長企業は、創業時は小さなスタートアップから始まり、まもなく急成長を遂げている。その理由として、日本経済新聞によれば、「成長著しい企業が日本の産業を大きく変えるという『期待感』から投資マネーが大量に流入したのがその原因である」と考察している(日本経済新聞 2018年12月17日)。つまり、急成長企業がスタートアップからここまで成長できたのは、適切な「投資」が行われたことが一因であることが示唆されている。

これに加えて、このような急成長企業がスタートアップから大きく成長できたのは、技術開発とその成果をコア技術として事業化に結び付けていく「技術経営」が上手く機能しているからである。

創業20年内の未上場企業で推定企業価値ランキング1位のプリファード・ネットワークスは、深層学習をハードウェアと組み合わせることができる応用範囲の広さと、個々のロボットが学習の経験をリアルタイムに共有できる「分散学習」等の独自の技術を保有している。また「誰も解けていない問題を解決するためには、(自社と他社の)お互いの能力を全力で掛け合わせる必要がありますから」という同社西川CEOの理念の下、トヨタ自動車やファナック、NTT、シスコシステムズ(米国)等の大手企業と様々な産業領域において研究開発を提携して行い、事業を加速させている(Forbes JAPAN 20179月号)。すなわち、プリファード・ネットワークスは、卓越した独自技術を生み出す戦略とオープンイノベーションの戦略を盛り込んだ「技術経営」が飛躍的な成長に寄与しているのであり、このような「技術経営」の戦略を描けるからこそ「期待感」が膨らみ、多くの投資を引き込むことが可能となるのである。

ランキング2位のTBMは、世界的にほぼ無尽蔵に存在する石灰石を原料とした、紙やプラスチックの代替となる新素材「ライメックス」の開発・製造を手掛ける。同社は、大企業とのオープンイノベーションも推進しており、エコシステムをまるごと輸出するグローバルな技術経営戦略も描いている(@人事Online “新素材「LIMEX」を生んだTBMの人事に大学生が抜擢された理由”https://at-jinji.jp/blog/15793/)。

ランキング5位のエリーパワーは、大型リチウムイオン電池および蓄電システムなどを開発・製造・販売するベンチャー企業である。同社は、335億円もの資金を調達し、2つの国内工場を立ち上げ、累計3万台以上の製品を出荷するまでに至っており、独創的な材料開発や完全自動化製造プロセス開発などの卓越した「技術経営」に加え、経営の独立性を確保するための資金調達を含めた「投資」に注力をしている(一橋ビジネスレビュー 第66巻、第4号、p64-77 2019年3月28日)。

急成長企業の共通のキーワードは、「投資」と「技術経営」にあるようだ。

 

 

 

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