技術経営ブログ

マジノ線の教訓から言える知財戦略

2018年11月19日

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 マジノ線とは、第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に隙間なく万里の長城のように設けた軍事要塞である。フランスは第一次世界大戦で戦勝国でありながら、泥沼の塹壕戦を通じて多大な被害を受けたため、ドイツの軍事化に対抗するために、マジノ線を構築したのである。どうしても泥沼の塹壕戦だけは避けたかったフランスは、専守防衛の思想に基づき、ドイツの国内侵入を断固阻止するために、マジノ線に要塞群を建設し、当時難攻不落と言われていた。しかし、ベルギーとフランスは、アルデンヌの森に阻まれており、大規模な軍隊が侵攻不可能と思われてたため、マジノ線は作られていなかった。

 実際に、第二次世界大戦が勃発し、ドイツ軍は、マジノ線には目もくれずベルギーに侵攻。その後ドイツ軍は、ベルギーからアルデンヌの森をあっさりと通り抜けて一気にフランス国内に入り込み、パリを陥落させ、フランスは降伏した。マジノ線は戦闘において殆ど使われることが無かった。

 自国の安全を考えすぎてしまい、堅固な要塞をドイツ国境に作り続けたが、さすがに国家予算が悲鳴を上げたのか、ベルギーとの国境には手が回らず、アルデンヌの森があるから大丈夫だろう、と過信していたところ、そこが盲点になってしまったのである。ドイツは、マジノ線を突破したのではなく、マジノ線を単に迂回しただけで、パリを陥落させた。

 この歴史的事実をどのように考察するか、また我々のイノベーション戦略、IP戦略においてどのように活かすかを考えてみる必要がある。
 マジノ線はあまりに堅固すぎた。このため、ドイツ軍はこれを正面突破することは早々に断念し、いかに盲点を探し、その盲点を介してどのようにマジノ線を迂回するかを徹底的に洗い出した。その結果、このベルギー~アルデンヌの森経由が最もマジノ線が手薄いことが分かった。アルデンヌの森はドイツの戦車部隊が突破できるはずがないと読んでいたフランスの裏をかき、発想の転換で、あえてそのアルデンヌの森を戦車部隊により突破してみせたのである。あまりに堅固な守りを作った場合には、別の発想でこれを迂回しようとする方向に相手を誘導してしまう例といえる。

 我々が特許網を構築する場合も同様である。自社ビジネスを守るために堅固な特許網を作ることができたと仮定する。このとき、自社ビジネス領域に是が非でも参入したい相手は、特許網に盲点があればそこから相手側による特許を展開していく、かつてのキャノンがゼロックスの特許網の隙間に自社特許網を張り巡らせるやり方もありえるだろう。更に発想の転換を取り入れた迂回方法として、知財戦略階層を脱し、更にその上位階層にあるイノベーション階層と連動させ、その特許網が時代遅れになるようなパラダイムシフトのイノベーションを起こす方法や、ビジネス階層と連動させ、ビジネスエコスステムを有利に作り上げることでその特許網を保有している自社が仲間外れになるような戦略を仕掛ける方法もあろう。つまり堅固すぎる特許ポートフォリオが逆にこのようなパラダイムシフトやビジネスエコシステムを誘導してしまうのである。

 このため、我々は特許網を築く上で当初は堅固で隙間の無いポートフォリオができたと思っていても、自身が当初気づかない思わぬ盲点を見つけられてしまう場合もある。このような盲点を見つけた相手は時には発想の転換を駆使してこれを突破しようとする。これに対して特許を既に持っている強みを利用し、相手の更に先を読み、時には知財戦略階層を超えたイノベーション階層やビジネス階層を含めた全体戦略を先行的に構築することが重要なのである。具体的にどのような戦略を構築するのかはケースバイケースであることは勿論であるが、マジノ線の教訓から考えられる知財戦略の一般論を自分なりに述べさせていただいた。

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