技術経営ブログ

一次的競争優位戦略と知財

2019年4月18日

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 以下の図は、一時的競争優位の戦略の各フェーズと利益の関係を示している。

 (リタ・マグレイス著「競争優位の終焉」日本経済新聞社(2014)に基づいて当社作成)

 リタ・マグレイスは、競争優位の一次的優位性の波をいくつかのフェーズを経て進化していることで説明をしている。「開始」フェーズでは、新たなチャンスを掴むために顧客のニーズを把握し、アイデアを創造する。次の「成長」フェーズでは、事業拡大のためのプロセスが実行され、事業が前進し、市場へ製品やサービスの導入が始まる。このフェーズから少しずつではあるが利益が上がってくる。このアイデアを発案したのが自社が最初であっても、成長の速度が遅い場合にはあっという間に他社に追い抜かれる。このため、「開始」フェーズから「成長」フェーズまで行きつけるのは、死の谷を越えてきたかなりの強者といえる。

 成長が順調であれば「活用」フェーズに移行し、適度な利益を継続的に生み出すことが可能となる。この継続的に利益を生み出す仕組みの背後には、顧客を惹きつけることが可能な差別化要因がある。この「活用」フェーズに到達することができた場合には、極力このフェーズを長引かせる方法を見つけることが重要となる。「活用」に到達したからと言って安心してはいけない。この期間においてなすべきことは、上記参考文献において以下のように述べられている。「活用フェーズをうまく活かすには、競争上の独自性を獲得している少数の重要領域に的を絞るべきだ。そうした領域内で、マネジャーは競争の手段と対抗の手段をうまく操り、次のイノベーションに向けて伸びしろの高い能力を養う。新たに生まれた優位性が最終的には会社の本業の一部として主力製品に統合されるようにしつつ、異なる領域からの脅威やそこにあるチャンスに注意を振り向けられるようにする」

 つまり、既存の優位性が永続的に続くものではないため、これを再構成や更新を行っていくための準備を怠らないようにすべきであるいうメッセージが込められているといえよう。これが次の「再構成」ステップへとつながる。しかし、この優位性の再構成や更新を行ってもいずれはその優位性自体が消滅し、利益が0になる時代がくる。このときにはいよいよ「撤退」フェーズになる。
 
 このようにして競争優位が生じ、また消滅するまでの各フェーズにおいて知財戦略階層はどのようにこれをフォローアップすべきか。上図に示した通り、開始の段階において知的資産の棚卸や知財戦略コンサルティングを行い、特許出願戦略を策定した上で特許出願を行うことで特許ポートフォリオを構築していく。この特許ポートフォリオ構築は、「開始」フェーズでは基本特許を、「成長」フェーズでは、周辺特許を固めていく。この特許ポートフォリオの構築は「活用」フェーズにおいても改良発明に関しては出願が行われていく場合もある。この「活用」フェーズにおける競争の優位性を守っていくのは、この特許ポートフォリオ構築を通じて固められた個々の特許である。そして、個々の特許がしっかりと優位性を保持することができ、また優位性を長引かせることができるか否かは、「開始」フェーズに行われる知財戦略コンサルティングの成否に依存することは確かだ。

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