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戦える特許ポートフォリオの陣形

2019年4月19日

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 複数特許の群で構成される特許ポートフォリオは何のために構築するのか?それは戦いに勝つためである。自社ビジネスを包含できる特許を取得することができたとしても、1件の特許しかなければ、相手側はどのようにしてその1件の特許を迂回するか、或いはどのようにしてその1件の特許に対して無効審判を請求して無効にするかをまず考える。しかしながら、1件の特許ではなく、複数件の特許からなる特許ポートフォリオが構築されている場合はどうであろうか。相手側は1件の特許は上手く回避できたとしても他の特許を踏んでしまう場合も生じ、なかなかこれを迂回するのが難しくなる。また複数件の特許をすべて無効にするのであれば、その数だけ無効審判を請求する必要が生じ、膨大な費用と労力がかかる。このため、複数件の特許ポートフォリオを行使することで、相手側から戦う意力をそぐことができ、結果として不戦勝を勝ち取ることができる。

 このような効果的な特許ポートフォリオを戦略的に作り上げることが重要であり、当社でも特に注力している(特許ポートフォリオのデザインと構築支援)。その中でも実際に侵害訴訟等でガチで戦う場合には、以下に説明する権利化に時間差を設けた特許ポートフォリオにしておくのが望ましい。つまり、以下の図のように、早めに特許出願し、早期審査を通じて早めに権利化を図る特許1~3(以下、「前衛」という。)と、後から実施形態を多岐にわたり補充し、審査請求も出願から3年ギリギリまで先延ばしし、権利化するまでに時間をかける出願4~7のグループ(以下、「後衛」という。)に分けた陣形を作る。

 

仮に侵害被疑製品が出てきた場合には、前衛の特許1~3を通じて行使する。この前衛の特許1~3を通じて勝てればそれで問題は無いが、侵害被疑製品を実施する相手側(以下「敵」という。)は、その前衛の特許を迂回したり、無効にしようとする。上手く迂回されてしまった場合に「特許請求の範囲においてこのような余計な限定要素を入れなければ良かった」と後悔してしまうことになる。但し、後衛の出願4~7を作っておけば、このような場合においても、後衛の出願のいずれかから、その余計な限定要素を限定無くても特許取得ができるかを検討することができる。そして、その余計な限定要素が無くても特許取得ができるのであれば、そのように補正し、特許権利化を即座に行い、以下のように前衛部隊にこれを加える。つまり以下の図に示すように、後衛の出願6→前衛の特許6にする。そして、この前衛の特許6も加えて改めて権利行使する。

 後衛の出願は、多岐にわたる実施形態が記載されていることから侵害被疑製品の態様に応じてクレームの内容を様々に変形できるような自在性を持っている。また、後衛の出願は、前衛の特許の出願時よりも後のものであることから、前衛の特許において記載していなくて後から思いついた実施形態や、ビジネスの進展に応じて初めて浮き上がってきた問題点に対しても対処できる構成が記載されている場合が多い、というよりもこのような記載を積極的に後衛の出願に盛り込んでおくべきである。その結果、後衛の出願におけるクレーム変形の自在性を高めることができ、これを前衛の特許に加えたときに敵に対する大きな影響力を及ぼすことが可能となる。

 仮に前衛の特許6でも勝てない場合には更に後衛の出願の中から補正を行い、前衛の特許に加えて戦っていく。繰り返し戦っているうちに敵による迂回するための抗弁を都度聞くことができ、敵の手の内を知ることができる。後衛から前衛へのアップと繰り返しの権利行使を行うことで、敵を追い詰め、戦意を挫くことで勝利につなげていく。逆にこのような戦術が取れるような特許ポートフォリオの陣形を当初から計画して作り込んでおくべきだと思う。
 
 

 
 

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